感想を書く気が萎える映画 「夕凪の街・桜の国」「自虐の詩」

期待した自分が馬鹿だった。好きな小説や漫画が映画化されるたびに劇場に足を運び、出来の悪さにがっくりとうな垂れて帰路につく。毎回同じことの繰り返し。それでもわかっちゃいるけど止められない。

「夕凪の街・桜の国」は原作のままの展開でありながら、過剰な演出によって単なる反戦映画になってしまっているのが残念でならない。冒頭で広島の平和記念公園が大写しされた時は目眩がした。そんな映画じゃないのに。マイナーな漫画雑誌にひっそりと掲載されたこの漫画が、なぜ数多くの賞を受賞し、多くの読者を獲得するに到ったのか。市井の人に突然訪れた悲劇と死に到る過程を淡々と描いたからこそ、読者に深い悲しみと共感を呼んだのだ。原作
の持つ最大の魅力をぶち壊してまで映画化する意味がどこにあるのか。

■評価
★★(2点/5点満点)


原作が大ヒット作とは言えない「夕凪の〜」に比べて、「自虐の詩」は間違いなく日本の漫画史に残る珠玉の名作である。「泣ける4コマ漫画」というキャッチコピーにはいささかあざとい感じがして好きではないが、間違ってはいない。確かに泣ける。でもそれだけじゃないんだよなあ。イサオは結構ヒドイ奴だし、幸江も単なる薄幸の人ではない。映画ではその辺りの描写を薄めているために、その後に待っている感動までもが薄まってしまっている気がする。その為にラストの名台詞、「幸や不幸はもういい。どちらにも等しく価値がある。人生には明らかに意味がある」が生きてこないのが残念だ。

■評価
★★☆(2.5点/5点満点)